← Back to portfolio

隊内が引き締

Published on

三分咲きの桜が散見されるようになった頃。

山南との思い出が詰まった前川邸から逃げるように、新撰組一行は屯所を西本願寺へと移すこととなった。

堀川通にそれはあり、easycorp 本願寺派浄土真宗の本山としても名高い。地元の人々からは"お西さん"と呼ばれ親しまれている。

壬生を出て堀川五条を南下して行くと、その威光を示すような北総門が見えた。

北総門を潜り右手、つまり境内北部には"太鼓堂"と呼ばれる二層の があった。まるで城の のようにも見える。

そして太鼓堂の奥には"北集会所"と呼ばれる三百畳は下らない広大な建物があった。

この二つを新撰組の屯所として借り受けることになったのである。

「うわぁ……広いね。それに何というか、栄えている気がするよ」

北総門を潜った桜司郎は思わず感嘆の声を漏らした。

本願寺に面する堀川通の南北にそれぞれ南総門と北総門が存在し、その真ん中にある正面通りには総門がある。その三つの総門は袖垣で囲まれていた。

普段それらは開放されており、参拝客や商人といった人々の往来が多い。農村である壬生とは違った活気がそこにはあった。

桜司郎の横に立っている山野は周囲をぐるっと見渡す。そしてハァと息を漏らした。

「まさに権力の象徴って感じがするぜ。此処を屯所として借り受けるなんて、流石は局長と副長だよなァ」

「おーい!鈴木君、山野君ッ。こっちですよ〜」

そこへ一足先に北集会所へ来ていた馬越が太鼓堂の前で無邪気に手を振っている。

それを見た二人は顔を見合わせると、そちらへ駆けて行った。

【松平肥後守御預 新選組宿】の大きな看板を横目に太鼓堂の前を通り過ぎると、目の前には北集会所がドンと構えている。

桜司郎はそれを見上げていると、何やら視線を感じ左手を見た。本願寺の僧侶が嫌悪感を隠すこと無くこちらを見ていたのである。

彼らとの"仕切り"として、本堂との間には青竹の の大樹が鎮座している。

「あ、あの……こんにちは。西本願寺さんって良い場所ですね」

視線に耐えきれず、桜司郎は僧侶へ話し掛けにいった。

「嫌やなぁ、 と同じ敷地におるなんて。はよ去ってくれんかな」

だが、僧侶はそのように悪態を吐くと去ってしまう。

「あ……」

それに視線を落とすと、既に北集会所に入った山野が視界の端で大きく手招きをしていることに気付いた。

「桜司郎、早く来いよーッ!屯所の中すげえぞー!」

その声に釣られて駆けていく。そして水桶で足を洗うと中に入った。

既に広々とした建物の内部は、大工によって細々と仕切られており部屋が作られている。

前川邸も広かったが、それとは比にならない程のそれに思わずキョロキョロと見てしまう。

「"俺たち"一番組の部屋は此処のようだぜ」

山野はそう言うと、二十畳程の部屋を指さした。どうやら、組ごとに部屋を分けるようにしたらしい。

以前は八木邸の二階の小さな部屋を一人で使用していたが、今度はそうはいかなかった。

──不味い。着替えはどうしよう。

ひやりと汗が背を伝う。

だが、部屋の中には